万字線 - 廃線跡Report

はじめに

【区 間】

 志文 - 万字炭山(23.7km)
【主な駅】
 志文、上志文、朝日、美流渡、万字、万字炭山
【沿 革】
 1914.11.11 軽便線として開通
 1919.11.11 朝日駅開業
 1922.09.02 万字線に改称
 1924.09.01 万字 - 万字炭山旅客開始
 1985.04.01 全線廃止

 万字炭山からの石炭輸送を目的に作られた。当初は軽便鉄道としての出発だった。その後、沿線炭坑の採掘量増大とともに人口も増加し、1919年には地元住民の要望に応える形で朝日駅も開設された。1922年、軽便線から万字線に線名が改称され、その2年後には貨物駅だった万字炭山駅での旅客の取扱いをはじめた。
 しかし、エネルギー革命により石炭産業が衰退し、それにあわせ利用者も減っていった。その結果、不採算路線として他の線区同様に廃止対象とされ、1985年に全線廃止となった。

現況

 すべての駅跡には碑が建てられ、駅舎やホームも残っていたりと、何らかのかたちで保存がされている。特に、旧朝日駅は鉄道公園として駅舎などが保存され、その他の関連施設も展示されている。ただ、第二鉄橋をはじめとする橋梁などについては、ほとんど撤去されている。

解説

【志文】(しぶん:)
 かつては万字線との分岐駅として2つの島式ホームをもっていたが、現在は室蘭本線の中間駅として残っている。すでに無人駅となっており、駅舎も待合室のみの簡単な建物だけとなっている。ただ、駅構内は大半は空き地となっているが広く残っており、かつての賑わいを示している。また、付近にある人道跨線橋もそれを証明するように、線路の数に不釣り合いなほど長いものとなっている。

 志文から先しばらくは室蘭本線と並行して進み、ともに幌向川を渡ったあと、万字線は大きく東にカーブを描く。幌向川の橋梁はすでに撤去されているが、橋脚は万字線部分が使われない状態でそのまま残っている。川を渡ったすぐの踏切部分は舗装の違いでかろうじて判別できる程度で、明確な痕跡はない。
 室蘭本線と離れて大きなカーブを描く途中、跨線橋の下をくぐっていたが、この跨線橋は志文の近くを通っていた旧国道が使っていたもので、現在でも銘板には幌向線の文字がはっきりと残っている。現在の国道は志文に近づくことなく、室蘭本線と等間隔のまま平行に進んでいる。国道の切り替えは万字線の廃止後に行われたことから、交差していたはずの線路跡は全く判別できない。さらに、二度目に幌向川を渡っていた部分では、橋梁はもちろん、橋台すら残っていない。現国道付近から続く築堤上には枕木が投げ出されていた。

【上志文】(かみしぶん:)
 駅舎が残っており、駅跡碑も建てられている。集会所か何かに使われているようで、手入れがきれいになされていた。ホームは残っていない。集会所か何かに使われているようだ。当時はすぐ裏にあるスキー場へのアクセスにも利用されていたようだ。

【朝日】(あさひ:
 駅舎とホーム、それに接する線路が残され、交通公園として整備されている。他に保存されているのものとしては蒸気機関車の動輪、転轍機などもあり、公園内に配置されている。
 この駅は、万字線の中で、唯一開通時にはなかったところで、遅れること5年、地域住民の運動によって1919年に開設された。

 万字線跡には橋梁の跡はほとんど残っていないが、この区間には唯一確認できた橋台が放置されている。

【美流渡】(みると:)
 駅舎などは残っていない。交番の裏に車止めが残っているのと、その奥の公園に跡碑などがあるのみ。跡地には転換バスの待合所が建てられている。
 かつては、ここから美流渡坑の専用線が延びており、上美流渡との間を旅客も扱っていた。

 駅周辺の線路跡は舗装の下だが、幌向川の手前では標識が草薮に埋もれていた。

 万字駅に着く手前に踏切の跡がある。その付近で幌向川を渡る橋があったはずだが、橋脚、橋台とも撤去されている。

【万字】(まんじ:)
 簡易郵便局兼バス待合所として使われている。脇には駅跡碑もある。裏手にはホームへ下る階段と長いホームも残っているが、かなり荒れている。
 そもそも万字という名は、鉱区の最初の所有者の家紋が「卍」だったことによるそうだ。

【万字炭山】(まんじたんざん:)
 駅舎は残っていて、再利用されている。何かの施設のようだが、詳しいことはわからない。駅跡碑は、ここから1km近く離れたところにある。
 開業当初は貨物駅で、旅客を扱いはじめたのは1920年のことだった。炭坑が閉山してしばらく経つが、何世帯かはここにとどまっているようだ。馬も飼われている。

 その先、さらに万字炭坑へと続く線路跡はすでに薮の中だ。かろうじてすぐ先に幅広の橋台が残っている。また、炭坑跡は森林公園として整備中で、関連施設はほとんど撤去されている。


1999.8