はじめに
【区 間】黒松内 - 寿都(16.5km)
【主な駅】
黒松内、中の川、湯別、樽岸、寿都
【沿 革】
1920.10.14 黒松内 - 寿都開通
1968.08.14 休止
1972.05.01 全線廃止
ニシン漁の不振と折からの大火に見舞われ、経済的に打撃を受けた寿都町を復興させることを目的に作られた鉄道。国による敷設を請願していたが、実現されなかったため、株式会社を設立しての開通となった。
当初は、旅客だけでなく、不振とはいっても春のニシン漁の時期には大量のニシン、また馬鈴薯などの輸送と順調な滑り出しだった。他には、大金鉱山の銅や亜鉛の精製品が湯別駅から積み出され、1934年には寿都鉱山が開かれるなど貨物輸送が重要なウエイトを占めていた。
しかし、戦後はニシンの不漁に加え、2つの鉱山の閉山、道路の整備などで、経営状況も悪化。岩内線の延伸部分(岩内〜黒松内)が湯別〜黒松内と重なるため、その買収を期待しつつ維持してきたが、1968年についに休止に追い込まれ、4年後にはそのまま廃止となってしまった。
岩内線の延伸は1964年に着工線に昇格したものの、工事自体は行われておらず、その岩内線も1985年に廃止になっている。
現況
廃止後30年が経過し、残っているものはそれほど多くはない。寿都駅周辺には役場などが建てられており、痕跡はほとんどない。それでも、路盤跡は一部で道路などに取り込まれてはいるが、辿っていくことは難しくない。橋梁跡もいくつかは確認でき、駅舎も移設されてはいるが現存しているものがある。ただ、今後状況が急速に変わることはないだろうが、碑の設置など、長くその存在を伝えていこうという施設がないようなのが残念だ。
解説
【黒松内】(くろまつない:アイヌ語で「クルマツ・ナイ」(和人の女のいる所)から)黒松内は函館本線の駅として現役であるが、駅舎は建て直されていて、寿都鉄道がなくなった当時のものではない。普通列車しか走らないローカル線区となってしまった今は、ひっそりとしている。
黒松内を出るとすぐに函館本線と別れて北西方向へ向かう。しかし、黒松内川を渡っていたはずの橋梁やそれに続く路盤跡はすでに消えてしまっている。ただ、その後は一部で道路に取り込まれているが、中の川付近までその跡を確認できる。
【中の川】(なかのがわ:)
遺構はまったくなく、跡地にはアパートが建てられている。数年前まではホームの残骸が残っていたようだが、それも撤去されてしまっている。線路は、ちょうど、アパートの裏手を通っていたようで、その前後の路盤跡とつながるが、アパートを建てる時に盛土をしたためか、はっきりとしていない。
中の川の先の路盤跡は農道や未舗装道などとして比較的はっきりしており、容易に辿ることができる。ただし、橋梁は残っておらず、分断されているところもある。それは湯別の手前まで続いている。
【湯別】(ゆべつ:)
駅跡には公共施設が建てられており、その痕跡はまったくない。かつては近くにあった大金鉱山で精製された亜鉛・鉛・銅といった鉱物の積み出し駅として利用されていたが、その鉱山も廃止前に閉山している。鉱山跡は現在も確認できるようだ。
その先も部分的に路盤跡を辿ることができるが、それも国道と接する地点から消滅してしまう。国道工事で取り込まれてしまったようだ。国道が山側から少し離れるあたりからは、また姿を現し、小川に架かる赤い鉄橋に到達する。いまだ残る数少ない橋梁だ。その上には枕木らしき木材が並べられている。また、その上には、送水管が通されている。
それを過ぎてもまだ築堤は続くが、また深い薮に変わり、樽岸へと続いている。
【樽岸】(たるきし:)
駅跡には工場が建てられ、コンクリートブロックを製造していたようだが、現在ではそれも跡形もなく、広い空き地があるだけだ。ただし、駅舎は個人の所有となって残っており、寿都方向に移設され、物置として利用されている。
残りの寿都までの区間も、多くが比較的明瞭に残っており、ところどころに、橋台や暗渠が見られる。国道から一段高いところを通っていた寿都鉄道は、途中から国道から離れ、車中からは見れなくなるが、この部分は薮の生える切り通しとなっていて、当時の雰囲気が十分感じられる。
この道は新しく作られた高校の敷地で終わり、それを通り抜けた後は、舗装道路に変わる。このあたりは痕跡がはっきりせず、二つの小さな川にもそれは認められない。
【寿都】(すっつ:)
広い敷地は町の土地として役場などの施設が建てられていて、残っているものは何もない。車庫や学校のすぐ近くのようだが、痕跡はまったくない。付近はちょっとした集落になっている。当時あったという車庫や転車台もまったくわからない。駅のあった高台から国道に下る、駅前通りにあたる道路も、廃止から30年が経っているためか、その雰囲気はなくなっている。すでに国道沿線が中心となっているのだろう。
2001.7